『ブラス ! 』、『プレミアム・ラッシュ』
『ブラス ! 』
時代の流れで炭鉱の閉山がイギリス国内でも相次いでいた。
ヨークシャーのグリムリーの炭鉱でも経営を継続するか、閉山するかの判断を行うことになった。
炭鉱夫たちで組織されている吹奏楽団グリムリー・コリアリー・バンドのメンバーたちは炭鉱閉山で職を失うかも知れないという不安と吹奏楽団が解散することになる心配を胸に、全英のバンドが参加するコンテストに向けて練習に励んでいた。
そこへある女性が現れ、見事な「アランフェス協奏曲」を披露し、新たなメンバーとして参加する。
しかし、その女性は閉山について議論する経営者側の人間だった。
コンテストと経営者会議までの吹奏楽団メンバーの苦悩と葛藤を描いた人間ドラマである。
1996年の作品である。
時期は前後するが、日本でも炭鉱の閉山が相次いだので似たような状況はあったのだろう。
日本最後の炭鉱は北海道釧路市の太平洋炭鉱だそうだ。
産業構造の変更でかつてその国を支えるほど勢いがあった産業が衰退していくということはどこの国でもあり、そのたびに労働者は怒りに声を震わせ、最後には涙を飲むことになる。
この話も結局、最後は閉山が決まり、バンドのメンバーたちは職とバンドを失うことになるのだが、誇り高く曲を演奏して、コンテスト会場を後にする。
実話を元にした作品らしい。
悲しい結末とも言えるが悲壮感が漂うような映画ではなく、おもしろかった。
若き日のユアン・マクレガーが出ていることもあるが、個人的には名探偵ポワロでジャップ警部を演じたフィリップ・ジャクソンが出ていたのを見どころとしたい。
メッセンジャーをしているワイリーは依頼を受けて、大学で女性から封筒を受け取る。
大学を出ようとすると男が現れ、封筒を返して欲しいという。
本人以外の人には返さないと言って拒否するとその男は執拗にワイリーを追い回し、危うく大怪我をするような衝突事故まで起こす。
彼の車の写真を撮り、それを持って警察へ行くとそこでその男が警察の人間であることを知る。
その男は悪徳刑事で、賭博の借金を返すために、依頼人の女性が利用していた地下銀行の送金チケットを奪おうとしていたのである。
違法なものの配達はしないと一度は元の女性に封筒を返すものの、依頼人の女性の身の上話を聞き、配達をやり遂げる決意をする。
日本では、確実に違法だと思われるような主人公ワイリーの自転車の運転が若干気になった。
渋滞する車の間を縫って、自動車よりも早く荷物を配達しようとなるとそのようなことも必要なのかも知れない。
冒頭、いきなり主人公が自動車に衝突して宙を舞うシーンが描かれる。
時間軸を前後しながら、主人公が何故そのような事故にあったのか、主人公を追い回す男の正体、配達を依頼された封筒の中身などがわかるようになっている。
映画の冒頭と最後に流れる音楽に聞き覚えがあったが、多分、CSI:NYの主題歌と同じだと思う。
The Whoの『Baba O'Riley』(ザ・フーのババ・オライリィ)と言うらしい。
シンセサイザーの楽曲はNYをイメージさせるのだろうか?
CSI:NYについてのWikipediaでは良く『Teenage Wasteland』と間違えられるのだそうだ。
そもそもCSIシリーズはみんな主題歌がThe Whoの楽曲なのだということをこの記事を書くために調べて知った。
全然、映画と関係ないが。
映画はちょっと盛り上がりにかけるというか派手さがない印象だったが、前述の時間軸を前後させる演出やニューヨークの町並みを俯瞰して道筋や現在位置を表す表現法、交差点などで自転車が通るルートを、こちらへ行くと車と衝突する、あちらへ行くと歩行者と接触してしまうなどと頭の中でシミュレーションしているのを再現しているシーンなど興味深い描き方があって、これは面白かった。