あれこれ備忘録@はてなブログ

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令状なしのGPS捜査が違法になると困る組織が警察以外にもあるのでは?

昨日、こんな判決が出たとニュースが出た。

www3.nhk.or.jp

www.asahi.com

個人的には当然だと思った。

本来は車に乗り込んだ人が携帯を持っていた場合、令状をとって位置情報を知るのに、それをGPS装置を車に勝手に仕掛けて探ろうというのだから。

令状を取ろうと思っても証拠や根拠に乏しい段階で、個人の行動を知ろうと言うのは問題があるだろう。

尾行やオービス、監視カメラがあるだから、現在認められている方法で探るのが妥当なのだろう。

ただ、これを見ていてちょっと気になったことがある。

GPS装置を使った尾行を行っているのは警察だけではないのだ。

GPSによる古紙持ち去り追跡調査を実施しています! | 板橋区

資源物の持ち去り対策「GPS追跡調査」を開始|八王子市公式ホームページ

「資源持ち去り」で検索するとかなりの自治体がどうようの対策をしているようだ。

資源ゴミを市から委託をうけた業者でない別の業者が勝手に回収し、リサイクルというか中国などへ売るという行為が問題になっており、そのような業者を摘発するために自治体が独自に囮のゴミを用意し、そこへGPS端末を忍ばせて、違法業者を追跡している。

警察でも令状なしにGPSを使った捜査ができないのに、自治体ができるだろうか?

囮のゴミ(古新聞や古雑誌)とそこに忍ばせたGPS端末は自治体のもので、違法業者はそれを勝手に持っていっている。

それを追跡しているのだから、例えば携帯を落として、それがどこにあるのかPCでGPSを使って調べるのと同じだという理屈がまず考えられる。

しかし、ゴミを持ち去ったり、その場であさったりして個人情報を盗み取るストーカーを取り締まれない理由に「ゴミを集積所に出した時点で所有権を放棄したことになる」という法律的な考えがある。

http://ure.pia.co.jp/articles/-/10158?page=5

ちなみにゴミを持ち帰る行為そのものは、民法に照らせば「ゴミに出した時点で所有権を失う」ため窃盗罪に該当しない、つまり違法でない‥‥筆者をはじめ探偵たちはそう教えられています。

2012年の記事なので今は事情が少し違うかも知れない。

Voice 2013年12月号 - Google ブックス

2013年の雑誌にも同じことが書かれている。

仮にこれが成り立つとすると自治体の囮ゴミはどうなるのだろう。

調べてみると資源ゴミについては2013年の以下の記事の時点で集積所に出されたゴミはゴミを出した個人、団体から集積所のある、回収の主体の自治体に移っているということにする条例を設定している自治体があるらしい。

資源ごみ持ち去り問題と自治体の対応 | ダイナックス都市環境研究所

ということは、自治体の囮ゴミは集積所に出すと一旦、放棄したことになるが結局、自治体に移るので変わらないということになる。

となると自分のGPS端末の位置を調べるだけだから問題ないということになるのかも知れない。

ここまで考えると、法律や条例をめぐる状況が変わっていなければ、条例で集積所に出されたゴミの所有権を設定していればその自治体のGPS追跡は問題なく、条例で設定してなければGPS追跡は違法ということになるのかも知れない。

ただ弁護士ドットコムの記事では、条例でゴミの所有権を設定することの根拠に疑問が投げかけられている。

ゴミ集積所に置かれた「古新聞」はだれのもの?「古紙持ち去り」は犯罪ではない!? - 弁護士ドットコム

ただし、所有権・占有権は物権ですから、国が定める『法律』でしかその内容は定められない(民法175条)ので、地方自治体の『条例』でその内容を定めることには疑問もあります」

となると、自治体による囮ゴミによるGPS追跡はかなりグレーなものになる。

警察に関してもおとり捜査は賛否がある。

おとりのゴミについても同じ懸念があるだろうし、それを警察ではなく地方自治体が行うのもちょっと色々問題があるような気がする。

今回の警察の令状なしのGPS捜査が令状が必要な強制捜査であると認定されたことを考えると、自治体のGPS追跡は、今後、これを行うことが難しくなるのではないだろうか?

素人には実際にそのようになるかはわからないが、弁護士ドットコムの記事を見ると違法業者が罰せられたのは所有権の判断なしに条例に違反したというものらしいので、これからは違法業者が訴え返せば、条例による罰則での罰金と同じ額かそれ以上の損害賠償請求が認められるなどということもありうるかも知れない。

メディアはこの辺を調べてみて欲しい。