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映画『スティーブ・ジョブズ』 世界を変えた男と言われた人物の実像は?

アップル・コンピュータを立ち上げ、MaciPodiPhoneを世に出した、言わずと知れた人物、スティーブ・ジョブズの実話を元にした映画である。

主人公スティーブ・ジョブズ役はアシュトン・カッチャー

彼は若い頃のジョブズそっくりなのである。

絶対、見た目で選ばれたな、と素人でもすぐにわかる。

しかし、後年のジョブズには似ていないので、冒頭部分やジャケットなどを見るとがっかりするかも知れない。


世の中を変えたとまで言われる製品を次々と生み出したジョブズだが、その人物評は悪いものが多い。

口八丁手八丁で自身にはそこまでの技術は無いのにあたかも実現可能であるかのように周囲に吹聴し、投資家をその気にさせる。

スティーブ・ウォズニアックなど周りの技術屋に無理難題をふっかけ、その上、報酬を偽り、半々に公平に山分けしたのように見せかけて利益をかすめとる。

売上やシェアでは圧倒的に成功しているマイクロソフトやその製品のWindows、経営者のビル・ゲイツをこき下ろす。

相当に嫌な奴だったようである。

途中でAppleをやめさせられるが、それも人望の無さからだろう。

しかし、彼は未来を見通す圧倒的な才能と、投資家たちをその気にさせる不思議な魅力があった。

彼がまだ完成していない商品について語るとき、彼の話術と身振り手振り、表情によって、彼の周囲には不思議なフィールドが作られたという。

この作品でも、彼のそんな魅力を垣間見ることができる。

彼の人物像でまず注目したいのは、彼がシリア系であるということだ。

養子として引き取られたため、彼がイスラム教だったわけではないが、イスラム教圏の国を嫌い、移民排除を唱える人たちも、彼の作ったiPhoneMacを使っているのだ。

アメリカの強みはそこにあったはずだ。

人種や出自を問わず、多様な文化や才能を受け入れることで、イノベーションを起こし、アメリカ国内にとどまらず、世界を動かす原動力を作り出してきたのだ。

アメリカ自らがその新たな原動力の可能性を捨ててしまっているのはなんとも皮肉である。


嫌な男で人望が得られそうもないスティーブ・ジョブズが成功したのには、スティーブ・ウォズニアックという高度な技術と心優しい性格のギーク、オタクの存在が欠かせない。

彼がいなければ、Macの前身のApple IやApple IIは存在せず、そこで成功することでMacintoshを作るための元手を得ることもできなかっただろう。

そんな彼をジョブズは都合よくうまいように使っていたという見方もあるかも知れない。

前述の報酬を偽って、利益をかすめとっていたのもそうである。

ウォズニアックは後でそのことを知って、悲しく思ったそうである。

正直に言ってくれれば、彼がくれた額で満足したのに、と。

実際、彼が仕事をとってきていたし、ウォズニアックが考えた設計した商品を世に出したのも、まだ見たことのないコンピュータを実現させるだけの資金を手配したのもジョブズだ。

次への元手や自分の仕事や成果を説明し、自分はこれだけ貰うと正直に話せばウォズニアックは納得したのだろう。

もちろん、納得しないものもいただろう。

後々、こういう話が出てくること自体がその証拠だ。

多分、ジョブズはかなり後々までこんなことをして周囲の人を騙していたのだろう。


成功している経営者でも、万人の理想の経営者や上司には選ばれない人物である。

この人の下では働きたくないと思う人は多いだろう。

こき使われた挙げ句、自分の労働力を安く買い叩かれるのだから。

しかも公平に山分けしたなどと嘘をつかれたり、恩に着せられたりするのだ。

さらには、アップルを立ち上げた当初のつらい時期に苦楽を共にした古い同僚でも、みんなの前で罵倒したり、即、クビにしたりする。

それでも多くの人が嫌々ながらも彼の元を離れなかったのは、彼についていけば、新しい体験をさせてくれ、新しい世界へ連れて行ってくれ、それを作ることに携わることができたからだろう。

彼はあるビジョンを元に新しい技術を作るというよりも、すでに基礎が出来上がっている技術を組み合わせて、生活を一変させるような商品を開発するのが得意だったとも言われている。

彼が創りだすのは新しい体験とそれを使う新しい生活なのである。

彼についていけば、それを、あるいはそれが出来上がる過程を、内側から見ることができるのである。

そのことを人望と呼ぶ人もいるかも知れない。

そういう人のことをカリスマというのかも知れない。


ジョブズ自身もこんな性格だったこともあって、順風満帆な一生だったわけではない。

ジョブズと違い、仲間を大切にする性格だったらしいウォズニアックは結局アップル社を、つまりは彼の元を去ってしまう。

さらには、すでに少し触れたとおり、彼は一度アップル・コンピュータの経営者を解任されて、彼自身がアップルを一度去っている。

自分が口説き落としてペプシコーラ社から引き抜いたジョン・スカリーに引導を渡されたのだ。

ある種のクーデターである。

しかし、彼はただでは終わらない。

失意の彼が作った会社が後のMacOSの元になるオペレーションシステムNeXTSTEPObjective-Cというプログラミング言語を作ったNeXT社である。

後に『トイ・ストーリー』をヒットさせ、今や『アナと雪の女王』などディズニーのフルCG映画を手掛ける、PIXAR(ピクサー・アニメーション・スタジオ)を買収し、今の状態に至る基礎を作り上げるということもしている。

一方、ジョブズを解任したアップルは不振を極め、一時はライバルであるマイクロソフトから支援を受けるまで落ちぶれてしまう。

そこへ前述の実績を引っさげて、ジョブズは華麗にアップルに復帰する。

そしてiMacをヒットさせてアップル自身も復活するのである。

その後の今日に至る快進撃は言うまでもないだろう。

しかし、その過程でジョブズは復讐するかのように周りの役員たちを次々に解任する。

その背景には二度と同じような目には会いたくないという恐怖感があったのかも知れないが、手放しで称讃できないと思わせる、歪んだ性格が垣間見える。

映画では上で書いたような出来事が全体的にさらりと描かれる。

賛否両論のある彼の人物像を公平に描きたかったのかも知れない。

だからあまり感動できるとか感銘を受けるとかいうような感想は持たなかった。

しかし、ジョブズが人生を描くに値する人物であるとか、描かずにいられない人生を送った人物であるとかいうことはよく分かった。

そんな作品である。


ジョブズとウォズニアックの関係が描かれた作品はいくつかある。

下の漫画もそのひとつ。


STEVES【無料連載版】 1話

eBookJapanでは無料で3話まで読める。

eBookJapanはヤフーに買収されるらしいからこれからYahoo!Japanのトップページから利用できるようになるかも知れない。

個人的にはちょっと複雑な気持ちだが。

一方、下の書籍は読むとジョブズの人生が一通りわかる、よくまとまった作品のようだ。