あれこれ備忘録@はてなブログ

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日本の黒い夏─冤罪 enzai を見た。松本サリン事件の加害者はオウムだけじゃない

1994年に起きた松本サリン事件で寃罪被害にあった河野義行さんと、当時のマスコミ、警察をモデルにした映画。

日本の黒い夏─冤罪 - Wikipedia

映画にも登場するが、元になったものは長野県松本美須々ヶ丘高等学校放送部制作のドキュメンタリービデオ作品『テレビは何を伝えたか』(第43回NHK杯全国高校放送コンテストラジオ番組自由部門優勝作品)だそうだ。

1994年6月27日、長野県松本市で毒ガス事件が発生した。

8人死亡、140人負傷の事件は後にオウム真理教が起こした化学兵器テロであることが明らかになるが、当初、第一通報者である河野義行さん(映画では神部俊夫さんという名前になっている)による犯行であると警察に疑われ、マスコミも警察の考えにのっとった報道を行い、河野さんを犯人扱いした。

映画なのでどの程度、真実なのかわからないが、河野さん宅が毒ガスの発生源に近く池から毒ガス成分が検出されたこと、第一通報者であることや河野さんが薬学部卒で農薬などの薬品を所有していたことなどから、警察は河野犯人説を考えることになったようだ。

警察、マスコミの姿勢は、印象操作が行われていた節があったという部分が描かれていた。

河野義行さんが写真の現像用に青酸カリを所持していたらしいが、毒ガスは縮瞳(瞳孔の収縮)を伴う有機リン系の化合物である可能性が高かったにもかかわらず、青酸カリとの関連性があるかのように報道していたようだ。

使われた毒ガスがサリンであることがわかったあとには、河野義行さんが庭でサリンを合成したと警察は考え、マスコミもそのように報じたようだ。

サリンが素人でもバケツに薬品を混ぜればできるとマスコミに答えた科学者というのは誰だったのだろう。

後に河野さんが持っていた農薬からは合成が不可能であることが判明しているし、他の番組でオウムの研究所でサリンを作るのにかなり苦労しており、純度が低かったことが指摘されていたと私は記憶している。

サリン事件に登場した「毒ガスの専門家」常石敬一教授を嗤う。

どうやら常石敬一教授らしい。

その他にも、河野さんが薬品の調合を間違えたと話していたなどという知人の証言や、事件後、河野さんが長男に薬品などの処分を命じていたのを聞いたなどという近所の人がいたり、スナックで「30から40人を殺せる量の薬物を持っている」と話していた男がおり、その男はタクシーで河野さん宅の近くで降りたなどという報道があったそうである。

河野義行さんが犯人でなかったことが明らかになった後、これらの人たちの証言は本当だったのか、そもそも本当に存在していたのかということは検証されたのだろうか?

松本サリン事件 - Wikipedia

Wikipediaによると調合を間違えたというのは河野さんを搬送した救急隊員の証言となっているようである。

これを警察がマスコミにリークしたらしい。

河野義行さんは妻が長期の寝たきり状態ののちに死亡し、河野さん自身も事件後しばらく重い症状で入院していたそうである。

入院中から警察は河野さんに事情聴取を何度もしていたが、状態が悪かった当初、事情聴取を断ったことや、その後、自分が容疑者として疑われていることに不安を感じた河野さんが弁護士を雇うと、警察やマスコミは本当に無罪なら自己防衛的な行動を取らず堂々としていれば良いはずだ、と考え、河野義行犯人説の疑いを強めていった。

1994年当時、さらには長野県松本市という地方都市で弁護士を雇ってマスコミ、警察対策をするというのは珍しかったというのもあるのだろう。

退院後、河野さんは弁護士を伴って記者会見を行っていたらしいが、弁護士費用や記者会見場の費用は当然、河野さんが出したのだろう。

こんな記事があった。

松本サリン事件で犯人扱いされた人物「自己負担2000万円超」|週刊女性PRIME [シュージョプライム] | YOUのココロ刺激する

この記事では主に家族と自分の治療費のことを話しているので、寃罪被害による金銭的な負担がどのくらいだったのかはわからない。

しかし、自分自身や家族が被害に会いその上、寃罪被害者になったことによる対策のための精神的、肉体的、金銭的な負担は相当大きかったことだろう。

映画では体調を考慮して事情聴取は2時間が限界であるという医師の診断書があったにもかかわらず、7時間に渡る聴取が行われたことや、マスコミはそのことで逮捕が近いことを確信する様子や、聴取のために警察へ向かう河野さんの車を乗用車やバイクで列をなして追いかける様子も描かれていた。

地方都市で、こんな扱いをされて良く河野義行さん家族はその町に住み続けられたなと思った。

河野さんの子どもたちは相当つらい思いをしただろうと思う。

上の記事でも、マスコミの取材や嫌がらせ、脅迫があったと河野さんは話している。


この映画を見ながら、私は「オッカムの剃刀」を思い出していた。

オッカムの剃刀 - Wikipedia

「ある事柄を説明するためには、必要以上に多くを仮定するべきでない」とする指針。

当時、オウム真理教という新興宗教団体がイラン・イラク戦争クルド人殲滅のために使われたというサリンを製造し、それを使ってテロを行うなどということは考えられなかっただろう。

排除して良いと思える非現実的な仮定だったのかも知れない。

そうなると、毒ガス発生源のすぐ近くだったり、第一通報者であったり、薬品の知識があったり、実際に農薬を始めとする薬品を所持していたことなどを考えると、河野義行さんを犯人と考えるのが一番シンプルで妥当な判断だったのかも知れません。

となると「オッカムの剃刀」は時として誤りを作り出す可能性があるのではないかなと思った。

仮定を検証する情報が全てあるとか、情報が全て正しいという理想的な状況であれば、「オッカムの剃刀」の考え方に基づいても判断を誤ることは無いのかも知れない。

しかし、最初から「物事は多くの場合、シンプルな仮定が正しいことが多い」などといった考えに基づいて、操作や取材を行い、シンプルでわかりやすい材料、手に入れやすい証拠、都合のいい情報などを集めてしまうと、大変な過ちを犯すことになるのだろう。

マスコミ、警察が主に批判されるが、有る事無い事、彼らに話す近所の人間など世間というものが恐ろしいと改めて感じた。

その上、寃罪被害が明らかになった後も、マスコミ、警察を悪者にして自分たちは悪くないと考え、反省しない世間は、何度でも同じような過ちを犯すだろうし、騒動の大小はあるだろうが現在進行形でそのような問題行為をし続けているのではないかと思う。

本当に罪深いのは誰なのだろうか?


これも思い出した。

伊丹万作 戦争責任者の問題

さて、多くの人が、今度の戦争でだまされていたという。みながみな口を揃えてだまされていたという。私の知つている範囲ではおれがだましたのだといつた人間はまだ一人もいない。ここらあたりから、もうぼつぼつわからなくなつてくる。多くの人はだましたものとだまされたものとの区別は、はつきりしていると思つているようであるが、それが実は錯覚らしいのである。たとえば、民間のものは軍や官にだまされたと思つているが、軍や官の中へはいればみな上のほうをさして、上からだまされたというだろう。上のほうへ行けば、さらにもつと上のほうからだまされたというにきまつている。すると、最後にはたつた一人か二人の人間が残る勘定になるが、いくら何でも、わずか一人や二人の智慧で一億の人間がだませるわけのものではない。

警察もマスコミも組織を構成しているのは一般の人と同じ人間だし、事件が起こるたびに未知のものを調べていくのだから、間違いや不確かなままになっている情報を元に考えたり行動したりせざるを得ないことがあるだろう。

マスコミは警察の情報を信用し、一般市民はマスコミの情報をそのまま受け取って世論を作っていく。

その結果が間違えていたら、だまされた、だまされたという。

時代は下っても状況はちっとも変わってない。

仕方がないことだが、だとしたら自分たちは無知な状況から事態を眺めることから始めて、手探りの状態で何が起きたのかを調べ、幾らか概要がつかめたとしてもまだまだ知らないこともたくさんあり、不確かなことも多いということを、後になってから言い訳に使うのではなく、現在進行形で常に持って事態に当たらなければならないではないか?

警察もマスコミも世論も個人の人生を左右する大きな権力を持っているのだから。

考えさせられる。

【魚拓】お前らアホだから、松本サリンの頃2ちゃんがあったら河野さんに凸してたんだろうな 早く画伯に謝れよ

現代社会で同じような事件が起きたら上の2ちゃんねるスレッドみたいなことが起こると考えると恐ろしい。

LINEで情報共有し、ニコニコ動画やツイキャスなどでリアルタイムに映像配信、個人で生中継とかするのだろう。

笑えない。

画伯って誰のことだか知らないが。


警察も犯人検挙で自分たちの存在意義を示すという面子が大事だし、マスコミはテレビなら視聴率、新聞・雑誌なら購買部数、そしてスポンサーが大事。

テレビ局を取材をした高校生のような若く青い考えでは世の中成り立たないのだろう。

そういう状況を考えると、オウム真理教も含めて、世の中は、それぞれの大人の事情のせめぎ合いのような気がする。

子供は子供で自分たちの事情で残酷なことをするので、この世は全て個々の人間達の思惑の中で生きているし、究極的にはルール無用なんだろうと思う。

ルールは無いが、「醜い部分とやさしい部分」を持っている人間によって、傷つけられたり助けられたりするということなのかな。

この不確かさの中で生きるのが私にはつらい。

検索したら、YouTubeにまるまる公開されていた。

違法だろうからそれを見ると良いとは言えないが、とても良い作品なので見る機会(DVDやテレビ放送など)があったらぜひ見て欲しい。

22歳ころの遠野凪子(今は遠野なぎこに改名)が高校生役をしていて、とてもかわいいのでそれ目当てという不純な動機でも良いと思う。

北村和夫北村有起哉が親子共演しているのも見どころ。

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