あれこれ備忘録@はてなブログ

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薬品の個人輸入に関するあれこれと自己責任論

自分が訴えている症状に対する治療を病院でしてもらえないということは、特に精神科ではあると思います。

ぼんやりとさせるような薬を出されて、体のだるさや頭の働かない感じがあって、そちらをどうにかしてほしいと思ってもそちらは副作用だから我慢してくれ、と言われることが多いのではないかと思います。

また、海外では認可されている薬が日本では認可されておらず、販売されていなかったり、処方できる病気が限定されていて、自分に対しては使ってもらえないということもあります。

都内の個人クリニックレベルでは指摘されているような新しい治療法、アプローチの方法が地方の病院ではしてもらえないし、相手にもしてもらえないということもあるでしょう。

フェリチン不足の抑うつ症状や、統合失調症の患者でナイアシンが欠乏していることなどは最近、ようやくNHKでも取り上げられるようになりましたが、まだまだほとんどの病院ではそのことを踏まえた治療はしてもらえません。

そういった場合に、患者が自力で治療をしようとするのはよくあることで、その1つが処方薬の個人輸入です。

最近ではネットで買えるようになっていて、利用している人も多いようです。

調べてみたところ、ベストケンコーやお薬エクスプレスなどといったサイトが紹介されていました。

しかし、除いてみると同じようなサイトの作りをしていて、最初の訪問時、つまり一番最初にページを開いた時に個人輸入の自己責任を警告するダイアログが表示されるのですが、その形式もほぼ同じでした。

これはどういうことなのかと思い、さらに調べてみると、このような記事にたどり着きました。

「ベストくすり」:シンガポールのインターネット会社につながる日本の不正オンライン薬局

LegetScriptというのは全世界の不正なネットストア形式の薬局を監視し、見つけた場合に関係当局に働きかけて閉鎖を促したりする活動をしている団体のようです。

論点・薬のネット販売(2)悪徳業者の監視、官民で…ジョン・ホートン氏

最初にあげた「ベストケンコー」と「くすりエクスプレス」はもともと「ベストくすり」というサイトで、LegitScriptが関係機関へ働きかけて閉鎖させたところ、最初の2つのサイトを即座に解説したということのようです。

どのサイトがどの程度悪質なのかちょっと難しいところがあると思います。

ひどいところだと、偽薬つまり効き目のない成分で作られた薬や、成分表に書かれてあるのとは異なる成分、例えば漢方だと言いながら化学的に合成された成分が含まれていたり、不純物が多い薬などが売られていることもあるそうです。

しかし、日本の場合では少し違ったところがあるようです。

日本では法律が厳しく、認可されていない薬品を国外の薬局から買う事自体が原則的には認められないようです。

また医師の処方が必要な薬も同様に処方なしに個人で買うことは禁じられているようです。

それらの薬は一度に一ヶ月分に相当する量だけ購入すること、持ち込むことが認められていますが、これは基本的には海外から旅行者や、もともと国外で病気を治療している人がその治療を日本でも継続したいという場合を想定しているようです。

日本に住んでいる日本人は基本的には日本にいながら海外へ薬を注文してはいけないようです。

しかし、これはなかなか厳しいですよね。

例えば、子供に奇形の危険性があるということで禁止されていたサリドマイドですが、一部のがんに有効であるということで海外で使われだし、それを知った患者は個人輸入で購入していました。

そういった流れの中で、適用範囲を限定した形で現在では病院でも処方できるようになっているようです。

サリドマイド(多発性骨髄腫)治療のメリット・デメリットとは?

書類提出など、通常よりも購入に高いハードルが設けられているようですが、保険適用で買えるそうです。

こういった海外では使えるが日本では使えないドラッグ・ラグの問題は以前からずっと指摘されている問題です。

特に精神科の薬はいろいろと問題があるのではないでしょうか?

例えば、日本でも効果と問題の両方が指摘された抗うつ薬SSRIがあります。

SSRIは世界で魔法の薬、奇跡の薬として注目され、カウンセリングもそこそこに内科のように機械的に処方すれば治るというような考えまで生まれたなどとも言われています。

日本でもそのような考えがあったようです。うつにも効きますし、強迫性障害や不安障害など以前の名称で言うところの神経症全般にも有効であるとされて、多くの人に処方されました。

その後、人によっては効かないこともあり、自殺などのリスクを高めるというデメリットまであることが問題になったのは少し関心がある人ならば誰でも知っていることでしょう。

大事なのはあるSSRIが効かない人は、SSRI全般が効かないというわけではないということです。

あるいは効く効かないとは別に副作用があって飲み続けられないかどうかが異なるようです。

例えばデプロメールが効かない人でもジェイゾロフトなら効く、副作用が少ないということがあるそうです。

となるとSSRIの薬の種類が多いほど選択肢が増えて良いように思えます。

しかし、意外なことに、全世界でSSRIを魔法の薬と言わしめた最初の薬であると言われているプロザックは日本では認可されていません。

実際、プロザックに関しても個人輸入で自己治療している人がいるようで2ちゃんねるなどで情報交換が行われているのが、検索をするとわかります。

そのほかの抗精神病薬でも日本では認可されていないもの、指定された病院でないと処方されないものがあります。

統合失調症の薬であるクロザピンは、日本では

講習等を受けて「クロザリル患者モニタリングサービス」(CPMS)に登録された医師・薬剤師の下でしか使用できないこととされる。また、原則として、18週間の入院管理下で投与を開始することが定められている。

ということになっています。

クロザピン:治療抵抗性の統合失調症に「切り札」登場

仕方がないことなのでしょうが、これと比べて、SSRIの自殺リスクや、その他の抗精神病薬の副作用のリスクは本当に少なかったのでしょうか?

糖尿病になったり、持病だったのが悪化したり、筋肉注射をして数ヶ月飲まずにすむという治療がありますが、それによって死亡したりするケースが起きています。

逆に、クロザピンのような監視のもとで処方するという方法が採れるのであれば、現在、認可されていない薬についても同じようにして処方できるのではないでしょうか?

治療の効果を感じられない人が、海外の薬販売サイトを見て、日本では使われていないが海外では一般的に使われている薬を見て、それが魅力的に映るのは仕方がないことだと思います。

さらにはリタリンのように適用範囲が狭められて、うつ病ではほぼ処方できなくなりました。

頭が重い、集中力が続かないなどの症状を持っていた人が、リタリンで仕事ができるようになって助かっていたのに薬を飲むことができなくなった、ということも起きています。

そういう人にとっても個人輸入は魅力的なのです。

病院から処方されているということは病院も、さらには国もどのくらいの人が薬を飲んでいるか、ある人がどのくらいの量を飲んでいるか把握できますが、禁止してしまった結果、患者が個人輸入による購入へ移行すると、飲んでいる薬の種類も量も把握できなくなります。

さらには個人輸入であっても販売者側が詐欺を働かない限りは、日本や海外で治療に使われている正規の薬ですが、脱法ドラッグや違法な薬物に手を出してしまう人も出てくるかも知れません。

大麻など感覚を鈍麻させる薬と違って、頭がスッキリしたような気分になる覚せい剤は、以前のように仕事がしたい、アクティブに活動したいという、個人が持っていたり、周囲がそれを求めるような勤勉性と無関係ではないと思います。

日本はそのような文化的な背景もあるのです。

国のお世話になること無く、場合によっては悪事を働いてでも、自立して生きていけ、という自己責任を社会が個人に求めたり、国や政府もそれを黙認・追認するのであれば、こうした動きはますます強まることでしょう。

問題が明るみになるまでは、国や他人に迷惑をかけないことを第一に考えるように求め、事が起これば重い罰を与えるという姿勢を国や政府はどんどんと明確にしてきています。

危険運転の適用範囲にてんかん統合失調症が加わったのもそういった背景によるものでしょう。

こういった狙い撃ちが差別でないかどうか今一度よく考えてほしいものです。

大都市圏以外では車なしに通勤が難しい地域で、このような縛りを加えて、どのようにさらなる自立を促していくのかという意味でも全く矛盾していますね。

自民党や今の政府の構成している議員が、欠陥だらけ矛盾だらけの自立支援法を作った小泉内閣でも主要な役職にいたこと、またその政権下で起こったイラクでの人質事件が自己責任論のきっかけだったことを考えると、より一層罪深さが際立つ気がしませんか?