外国語を勉強するときに知っておくと役に立つかも知れない心理学・認知神経科学
マガーク効果
外国語が聞き取れないという人は多いと思います。
単語は知っているけれど、ネイティブの発音を聞いたことがないから聞き取れないとか、一つ一つ単語は聞き取れてもそれについて考えているうちにその後の言葉を聞き逃していくということもあるでしょう。
原因の1つに「マガーク効果」というものがあります。
ba(バ)の音声とga(ガ)と言っている動画を重ねると、da(ダ)に聞こえてしまうという効果です。
これはさらに微妙な話です。
baの音声でvaと言っている画面を重ねると、baとは聞こえずにvaと聞こえてしまうというものです。
これを見ると、日本人はbaとvaの発音の区別がつかないとか発音が下手であるとか言う外国人の意見が疑わしくなりますね。
barなのかfarなのかというバージョンもあります。
左の口元をみるとbarに聞こえ、右の口元を見るとfarに聞こえます。
外国語効果(外国語副作用)
外国語をちょっと読み書きするとか単語を覚えるという程度ではこれを実感することはありませんが、常に外国語で会話するようになると起こるという現象があるそうです。
認 知 心 理 学 者 の 高 野 陽 太 郎 は 「 不 慣 れ な 外 国 語 を 使 っ て い る 最 中 は 、 そ の 外 国 語 を 使 う の が 難 し い だ け で な く 、 思 考 力 も 一 時 的 に 低 下 す る と い う 現 象 」 が あ る と 主 張 し 、 そ の 現 象 を 「 外 国 語 効 果 」 と 呼 ぶ 。
Wikipediaでは外国語副作用として説明されています。
外国語を話す人が、その外国語に難しさを感じるというのとは別に、慣れない言語で話しているときには思考力が低下してしまうというのです。
また、この効果によって、母国語以外の言葉を話している人の知的能力が低いと評価されがちになるそうです。
良く外国人を見ていて、馬鹿っぽく見えるというのは言葉の使い方や発音の仕方がおかしいという以外にもこんなことが背景にあったのですね。
海外の言葉を、その言葉を母国語としている人たちにそれなりに通じるまでに話せるようになっている人が頭が悪いはずは無いということは、常識的に考えればわかりそうし、実際、例えば日本で活動している外国人も高学歴の人が多いですよね。
それでも何だかトンチンカンな受け答えをしていることが多い印象があったりします。
実際にこの外国語効果によって、脳の多くのリソースを母国語でない言葉を話すということに使われて、思考力が低下しているのですね。
一方で良い意味での外国語効果もあるようです。
外国語で話すと母国語で話すよりも、感情的な面を排除したより論理的なものの考え方ができるというのです。
この記事ではマンデラ元大統領のエピソードが取り上げられています。
アパルトヘイトで差別をされていた側であるマンデラ元大統領が、差別によって失われた命や財産や時間などと言ったものによって感情的になったり、思考停止にならずに、白人たちと対話をすることができたのには、マンデラ元大統領が白人たちが使っていたアフリカーンス語で話していたからだ、というのです。
アフリカーンス語を学んだのが、レジスタンス活動を行ったことで拘束された刑務所でだったというのがまたすごいことだと思います。
ここで感情的にならず、体制側、差別をする側の言語を学ぼうと思ったわけですから、マンデラ元大統領はもともと冷静にものを考えられる人だったとも言えるかも知れません。
刑務所に服役することになったのには、レジスタンス活動が実力行使によるものだったことがあったので感情的なところも決して無かったわけではないとは思いますが。
マガーク効果、外国語効果。
人間というのは不思議ですね。