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中東出身者に対する偏見に笑いで立ち向かう 〜 マズ・ジョブラニ「イラン系アメリカ人の噂聞いてる?」

NHK Eテレのスーパープレゼンテーションを見た。

マズ・ジョブラニイラン系アメリカ人の噂聞いてる?」

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マズ・ジョブラニサウジアラビア人、インド人、イラン人が カタールのバーにやって来て…」

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マズ・ジョブラニイラン系アメリカ人の俳優であり、コメディアン。

俳優としてはドラマ『24』にも出演しているそうだ。

イランとアメリカは対立関係にあったので、イラン人やイラン系アメリカ人は他の人から警戒されるようだ。

それでなくても中東などイスラム系の人たちは地域の中で不当な扱いを受けることが多いのだろうから大変だ。

子供の方のブッシュ大統領イラク、イラン、北朝鮮悪の枢軸と批判したことに対して、「悪の枢軸コメディツアー」を数人で企画し、アメリカなど各地でコメディー公演を行ったらしい。

私の話を聞いて分かる通り アメリカ訛りなので イラン系アメリカ人として どんな役でも こなせると思うのではないでしょうか ハリウッドでは往々にして 監督が中東出身のキャストを見つけると 「イラン人か 素晴しい」と言ってこう尋ねます 「アッラーの名の下 お前を殺す」って言える? 言えるけど これはどうかな 「やあ 私があなたの担当医だ」 監督は「いいね そして病院をハイジャックするんだ」と続きます (笑) どうも要点が分かってもらえていないようです 誤解しないでください 悪人を演じるのは構いません 悪人を演じたいです 銀行強盗役をやりたいんです 映画で銀行強盗をしてみたいです でも銃でやらせてください 爆弾を体に巻くのはごめんです (笑) 監督が「マズ 体に爆弾を巻いた」 「銀行強盗はどうだ」と言うのを想像できるからです なんでそんなことするんですか? 金目当てなのになぜ自爆するんですか? (笑) そうでしょ (拍手) 「金を出せ さもないと自爆するぞ」 (笑) 「じゃあ自爆してもらおうかな」 「外でやって下さいね」 (笑)

俳優として活動していると、中東系であるというだけでかなり固定化された役でばかり起用されるという話です。

ネタですからどこまで本当かわかりませんが、銀行強盗をするのに自爆ベストを着るのは確かにおかしいと思う。

金を奪って帰ってそれを使いたいから強盗をするのに、自爆するなどというのは全く矛盾している。

それでも中東系、イスラム系の人たちに対して、その他の人々が抱いているイメージに合わせて、キャラクターを作ろうとドラマや映画の監督、脚本家たちがするということだ。

面白い事に そのパキスタンイスラム教徒の 男によって世界中のイスラム教徒や中東出身者 そしてパキスタン人の評判を悪くした点です もうひとつはパキスタン タリバンが その爆破未遂について関与を認めたことです なぜ爆破未遂だったにも関わらず 自分たちの手柄としたのでしょうか? 「我々が言いたかったのは」 「努力はしたということだ」 (笑) 「さらに言えば」 「考えることに意義がある」 (笑) (拍手) 「つまり いつもうまくいくとはかぎらない」 (笑) 白人が飛行機を飛ばした時は 国内にいた私の中東出身の友達全員が テレビを眺めながら「中東出身者はごめんだ」 「ハサンじゃないでくれ フセインもだ」 そしてジャックという名前が流れると「よし!」 「中東じゃない」という具合でした でもその後もニュースを見ていました 「事件の直前 彼はイスラム教に改宗した模様です」 「ちくしょう! どうしてなんだ ジャック?」となると思ったからです

イスラム系の人たちがテロ事件を起こすたびに、イスラム系の住民たちは、自分たちへの偏見が強まることを懸念し、怖れることが背景となっているネタ。

事件が起こると、犯人がイスラム系の名前で無いことに喜び、ホーム・グロウンで後にイスラムに改宗したことが明らかになるとがっかりしたり怒ったりする。

皆さん 聞いたことがありますかね ちょっと前に アメリカの航空機の通路を イスラムの家族が歩きながら 「どこが一番安全な席かな?」という話をしていました これを聞いた乗客がテロリストだと誤解して 彼らは最終的に航空機から 降ろされてしまったんです 父と母と子 ごく普通の家族が 座席について話してただけですよ もちろんアメリカの航空機には タブーがあることは承知してますよ 航空機の中で「ハイ、ジャック」 こんな挨拶の仕方はダメですね 航空機の中で「ハイ、ジャック」 こんな挨拶の仕方はダメですね 友達のジャックがいたとしても 「ご機嫌いかがですか ジャックさん」 こちらの方が無難でしょうね (笑) いやいや 安全な席について 話をすることもできないとはね

事故か何かが起こった時に安全そうだったり逃げやすい席を探していただけでテロリストと間違えられて飛行機を降ろされた家族の話が紹介される。

似たような事態にならないために、友人のジャックと飛行機の中で出会っても「ハイ!ジャック!」と言ってはいけないというジョークである。

どれも面白いかも知れないけど、切ない話だ。

偏見やそれが背景にある生活をネタにしたジョークを、その当事者にあたる人が自虐的に披露することで、周囲の人や社会から認められるということは良くあるのかも知れない。

障害者や性的マイノリティーの人たちでも同じようなことがある。

それをすることで自分たちは危険でない、ということをアピールしていることになるからなのかも知れない。

しかし、それをすることで偏見や差別のある状況を受容しているように見えてしまう。

差別や偏見をしている人たちをそのまま許しているようにも感じる。

また、こういうことが行われることで、差別、偏見をしている側が同じようなジョークをして、問題になるということも起こる。

同じネタを差別されている側がするのは許されて、差別する側がするのは許されないというのはフェアじゃないようにも思う。

そもそもネタの背景になっているものは許されないものであるということがはっきり宣言されなければいけないと感じてしまう。

完全に禁止されないにしても、お行儀が良くないものとされるのが好ましく、そのようなネタの材料となっている状況をなくしていく必要があると皆が認識するべきではないかとも思う。

もしかすると、そういうものの積み重ねがポリティカル・コレクトネスの息苦しさなのかも知れないが。

ちなみに、伊藤穰一氏と一緒に番組の司会進行役を務めているスプツニ子!氏は以前、人工知能学会氏の表紙が女性蔑視だという認識を示して物議を醸している。

togetter.com

togetter.com

人工知能学会の学会誌の表紙が女性をイメージしたお掃除ロボットだったことが女性蔑視だと批判したのだ。

その後もちょこちょこ物議を醸すようなことをしているようだ。

blogos.com

彼女も学会誌の表紙のようなステレオタイプを真っ向から批判せずにアートで笑いや風刺を表現すれば良かったように思う。

ソースが見つからなかったが、人工知能学会の件が問題になった時、スプツニ子氏は日本人に対する外国人の偏見やステレオタイプには寛容だという指摘があった記憶がある。

海外の人が抱く日本人のイメージには、目くじらを立てず、アートの題材や笑いに変えたら良いというような考えを持っていることが伺える記事があったのだ。

欧米の差別や偏見については、肯定はしないが個々人の考えとして認めて、それに対する笑いなどの立ち向かい方を受け入れ、日本人のそれに対しては何故か認めないというダブルスタンダードがあるような気がする。

日本人には完全無欠なお行儀の良さを求めているような気がするのだ。

正直、素直に笑えなかったが、興味深いTED公演だった。

最近はたまにしか『スーパープレゼンテーション』を見ることができていないが、もう少し見る機会を作ろうと思う。

TEDでいつでも見られるが、自分でサイトにアクセスしたりアプリを利用すると、どうしても自分の興味のあるものばかり選んでしまう。

やはり、提案してくれると要素があり、思わぬ出会いがあるテレビというのは必要な存在だと思う。

テレビで見た後、TEDのサイトで振り返ることができるというのが素晴らしい。