北方領土問題で多くの人が知らないこと 返還交渉は島単位。面積二等分や3.5島はありえない
これに対して当初、このようなはてなブックマークコメントを書いた。
素人ながらひとつだけ言っておくし皆に知っておいて欲しい。島ごとの返還はあり得るが面積2等分とか3.5島論と言ったものはありえない。日本は戦前・戦中の一時期を覗いて地続きの国境線を持ったことは無いから。
北方領土について語るほど良くは知らない。
だが、ブコメに書いたとおり、面積2等分とか3.5島論というのはありえない。
択捉島の面積が他の3島(歯舞群島は小さい島々の総称だから1島と数えるのが妥当かわからないが)を足しあわせたものよりも大きい。
そのことから3.5島論や面積2等分論というものが出てきたのだと思う。
しかし、戦前・戦中の特殊な一時期を除いて日本は地面の上の国境線を持ったことは無いのである。
例えば樺太(サハリン)の南側が日本であったことがあるし、みんなが知っている通り、大陸に進行した際にはそこに国境を持っていたことになる。
樺太の南側については、これは国境線があったというよりは雑居状態で明確な国境線がなかったということだ。
千島列島の日露国境は得撫(ウルップ)島と択捉島の間で択捉島は日本側の領土だった。
千島・樺太交換条約によって樺太の南側もロシア領とする代わりに、得撫(ウルップ)島から占守島(シュムシュ島)までの千島列島を日本の領土とすることになった。
この一連の日本とロシアとの国境の取り決めの際に千島列島として想定されていたのは、得撫(ウルップ)島から占守島(シュムシュ島)であった。
つまり、択捉島から日本側は最初から日本側の領土だったのであり、千島列島を放棄するとしたサンフランシスコ講和条約に絡んだ日本側の発言に、国後島、択捉島は入っていない。
これが現在の日本側の主張のようだ。
対して記事の鈴木宗男氏の主張によると、南千島という概念には国後島、択捉島が入るのだそうだ。
これが問題をややこしくしているということだ。
しかし、2島の帰属は日本であるというのは日ソ共同宣言で日本と当時のソビエト連邦で確認したはずなのに、ロシアはその2島も返すつもりがないような発言をしていたりする(それぞれ当時の外務大臣やら首相やら外務省関係者がしてその都度、日本で物議を醸したり抗議したりしている)。
2島先行論というのは歯舞、色丹2島をとりあえず返してもらって、残る国後、択捉は継続協議にしようというものだが、それすら怪しい状況だと思う。
4島は返ってこないして、2島だけ返ってくるのと、4島全てが日露の共同開発、共同所有となるのとどちらが価値なのだろうか?
さて、面積2等分論、3.5島論は択捉島のどこかに国境線を作ることになる。
これをすると日本は戦後初めて地続きの国境線、海の上ではない国境線を持つことになる。
戦後、軍を解体し警察予備隊を経て自衛隊を作ってから、国土の上の国境を守ることになる。
現在、空は領空侵犯があった場合、スクランブルで航空自衛隊が戦闘機で発進して事にあたっているが、海の上は最初に対応するのは海上自衛隊ではなく海上保安庁の船のはずである。
海上保安庁は国交省の管轄で警察とは別だが、文民警察組織の位置付けだ。
つまり、空ではない国境は警察の関係機関が当たっているわけだ。
国土の上の国境を持った時、日本は自衛隊と警察のどちらの組織が守るのだろうか?
海の例から考えると、国境警備隊は警察の関係組織になるだろう。
一方、ロシアは国境警備も沿岸警備も軍の組織であるそうだ。
警察が軍と対峙するということで果たして有事の際に対応できるだろうか?
新たに組織を作るところから前代未聞であり、いろいろな懸念がある。
さらには有事の際に、択捉島の南側の日本側にいる民間人を安全に逃さなくてはならない。
可能だろうか?
民間人は置かずに、漁のための番屋(漁の時期だけ一時的に滞在する施設)とあとは自衛隊の基地、税関などの施設くらいしか置かないというのが現実的なような気がする。
島単位の返還交渉であれば、とりあえずこういったことは考えなくて済むのである。
北方領土問題は返ってくるかだけでも困難な上、どういう形態で返ってくるかでも初めて続きの対応が迫られる難しい問題なのである。
これだけいろいろなことを考えなくてはいけない問題で国民のコンセンサスを得るのに知らなければならない情報が多い。
にもかかわらず、領土問題は日本の問題であるにもかかわらず、北方領土問題を国民全体で考える機会を設けず、北海道や北方領土を望む根室市といった地元運動や元島民の運動としてしまった日本の罪は極めて大きいと思う。
そもそも四島一括返還と二島先行返還は知っていても、面積二等分論とか3.5島論を知らない人もいるのではないかと思う。
北方領土問題は実際には相当深い問題だと思う。
素人でも少し事情を知っているだけでこれだけの懸念が思い浮かぶのだから。
もっと多くの人が北方領土問題に関心を持って欲しいものだと思う。
上に書いたものちょっと詳しい人が見ればすでにわかっていることだろうし、稚拙な主張だと思うが、前述のような問題点を今までほぼ目にしたことは無い。
ということはマスコミも含めてほとんど北方領土問題に関心がないのだろう。
北方領土問題に関してはまず無関心を改めることから始めなくてはいけないのではないか?