ディオゲネス・クラブは現代の居場所と思ったが、よく考えるとネットカフェだった
上の記事を書いていて思い出した、シャーロック・ホームズのディオゲネス・クラブが出てくる作品を読んでみました。
シャーロック・ホームズの兄のマイクロフト・ホームズが登場する最初の話です。
彼も会員であるという会員制クラブがディオゲネス・クラブです。
ロンドンには、内気だとか人間不信などの理由で人と付き合う気のない男が大勢いる。だからと言って、彼らも座り心地の良い椅子や定期刊行物の最新号を避け ている訳ではない。ディオゲネスクラブが始まったのは、こうした人たちの利便のためだ。今ではこの街で最も非社交的な人間が大勢加入している。他のメン バーの事をほんの少しでも話題にすることは禁止されている。
ひきこもり支援団体が、外出ができるようになった人たちが定期的に通えるようにアパートやマンションの一室などにスペースを用意していたりします。
それは「居場所」と呼ばれています。
無目的に来ても良いのですが、希望すれば受けられる、SST(ソーシャルスキルトレーニング)やパソコン教室などのプログラムを用意しているところもあります。
精神疾患を抱えた人のリワークプログラムや軽作業をする作業所も似たような形態のところがあると思います。
ディオゲネス・クラブに似ているかな、と思ったのですが、考えてみると少し違いますね。
居場所や作業所のような場所では、基本的に世間話程度の交流はありますし、自分の世界に入り込むような場所では少なくとも無いような気がします。
もちろん、具合が悪くて来たは良いけれど、他人と話したり、軽作業をすることもなく横になっている人はいるようですが。
「彼らも座り心地の良い椅子や定期刊行物の最新号を」求めているが、人とできるだけ関わりたくないという人は、現代の日本ではどこへ行くか?
と考えると、ネットカフェがぴったり当てはまるのではないでしょうか?
ネットカフェは、入り口での簡単なやり取りのあとはほぼ誰とも交流を必要としません。
リクライニングチェアのある個室に入って、ネットをしたり、ゲームをしたりできます。
多くが漫画喫茶の要素も持っているので、漫画や雑誌を読むことも可能です。
飲み物や食べ物のサービスもあるところが多いですね。
格式はディオゲネス・クラブとは違うでしょうから、マイクロフト・ホームズは来ないでしょうが。
ディオゲネス・クラブは貴族や上流階級の人たちが会員であるようで、労働者階級や下級の軍人が会員になることはないでしょう。
そのかわり、ネットカフェはディオゲネス・クラブと違って、知らない人はほぼいませんね。
そのくらい盛況で、利用者も多いということです。
ディオゲネス・クラブのターゲット層と現在のネットカフェの利用者層と比べると、似ているようでもあり、違うようでもあります。
上の記事で引用されている別の記事でも指摘されていましたが、ディオゲネスという昔の哲学者を例えとして使われるタイプの人たちは、人が嫌いでももっと堂々としているようです。
劣等感が背景にあるとしても、もっと堂々と人嫌いでそこが偏屈者として評価されるのでしょう。
劣等感はあるけれども、気後れ感は見えない、というところに至る感情の変遷を考えると確かにコンプレックス(複雑さ)という言葉が当てはまるような気がしますね。
ひきこもりや対人恐怖、パニック障害などなど、メンタルに問題を抱えた現代の日本人は、偏屈になることができない状況にいるのかも知れません。
まさにこれらの問題からの開放は、ディオゲネスやツァラトゥストラになることなのでしょうね。
おまけ
青空文庫や小説が書かれたWebサイトを縦書きで見たいという人は、「えあ草紙」を利用すると良いですよ。
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