坂口安吾の『ヤミ論語』が現代に通じる指摘ばかりですごい
1948(昭和23)年に書かれたものらしいですが、何故か現代の問題に切り込んだ指摘がたくさんあります。
いかんせん時代が古いので、女性蔑視なところがあったり、チークダンスが猥褻だというような偏見があったりしますが、多くの部分は本質をついた鋭い批判が書かれていて、全然古さを感じさせません。
体育会系、応援団系の雰囲気で行われる風紀委員や自治会はファッショだと言い、 家柄や外見で、助けるかどうかを決めている人たちが、これは単純な慈善であり下心はありませんという無自覚な態度を無学無智だとして、そういう人たちほど今の世の中では生活力がある証拠がこの出来事であると言う。
地震を天災と言って受け入れ、地震にこりることが無い日本人の気質を嘆き、地震に懲りない人たちは戦争にも懲りないと指摘する。
戦争引揚者や浮浪児という当時の世相の形をとってはいるが、貧困を放って置く政治の怠慢が、家族ぐるみで政治を呪い世間を呪い犯罪へ駆り立てる雰囲気を作ると彼は考えているようにも取れる。
いったい、この坂口安吾という人はどれだけ鋭い感性を持った人なんだろうと感心してしまいますね。
私は、この人の本来の、文学作品を全然、読まずにエッセイばかり読んでいますが感心することしきりです。